戦闘シーンとロングトーン

戦闘シーンと長く引き伸ばされた音

ロングトーン、即ち長く引き伸ばされた音が、ロールプレイングゲームの戦闘シーンの音楽でしばしば使われている例を見ながら、ゲーム音楽の特異な面の一端を考えてみようと思う。

ここではドラゴンクエスト(以下ドラクエ)とファイナルファンタジー(以下FF)の音楽を取り上げる。戦闘シーンの音楽にロングトーンを用いる手法は、ドラクエは2作目から、FFでは3作目からその特徴が見られる。

ドラゴンクエストの例

すぎやまこういち作曲 ドラゴンクエスト2『戦い』

ドラクエ2の戦闘シーンの音楽。曲の前半部分は、モチーフの一部として、F#のロングトーンの鳴っている時間が多く占める。モチーフは繰り返されて、後半部へと展開する。

すぎやまこういち作曲 ドラゴンクエスト2 『戦い』

曲の後半は、前半のロングトーンとは対照的に、短い音価をともなって動きを持った楽想があらわれる。

このようなロングトーンを特徴的に扱う手法は、2以降のドラゴンクエストシリーズの戦闘シーンの音楽でも用いられる。以下は、ドラクエ3の戦闘シーンの曲の例。

すぎやまこういち作曲 ドラゴンクエスト3 『戦闘のテーマ』

緩急のセッション

次に、このようなロングトーンを伴う手法に、緩急の概念を当てはめていこう。先のドラクエ2の戦闘シーンの音楽で言えば、前半のロングトーンが「緩」、後半の動きのある楽想が「急」。ゲーム音楽は、曲が繰り返され続けるものであるから、ドラクエ2の戦闘シーンの音楽は、この緩と急が定期的に、交互に繰り返しあらわれる構造となるだろう。

ところで、音楽を演奏することもPlayであり、ゲームをすることもPlayである。したがって、ゲームをプレイするということは、音楽とゲームプレイヤーとのセッションであるというふうに考えることができる。

先に音楽の側に緩急の構造があることを見た。プレイヤー側の緩急というのはあるだろうか。それはやはりゲームであるから、ゲームをしていて「緩」な状態と、「急」な状態というのはあるだろうと考えるのが自然なように思われる。ロールプレイングゲームの戦闘シーンで、例えばパーティ全員に攻撃を選択させるべく、Aボタンを連打しているような状態―「急」、・・この敵マヌーサ効くだろか、などと少し手を止めて考えたりしているような状態―「緩」等々。

以上のように音楽とプレーヤーそれぞれに緩急の状態があるとすれば、以下のように四通りの組み合わせが生じる。

音楽プレイヤー
1
2
3
4

このうち音楽の方は、定期的に緩急が入れ替わるのに対し、プレイヤーの方は不定期な偶然性をともなった緩急の流れとなる。音楽の定期的な緩急を土台に、その上にプレイヤーの不定期な緩急が加わる、そのようなセッションとなるだろう。

ファイナルファンタジーの例

FF3の『バトル2』は、曲の前半と後半の楽想の対照が鮮やかな構成となっているが、そのことはそれぞれの楽想で使用される音価(音符一つ一つの音の長さ)との相関が見て取れる。

植松伸夫作曲 ファイナルファンタジー3 『バトル2』

冒頭は八分音符の音価を中心とした楽想。

植松伸夫作曲 ファイナルファンタジー3 『バトル2』

後半は、息の長い旋律でその旋律の大半を2分音符以上の長い音価が占める。

植松伸夫作曲 ファイナルファンタジー4 『バトル2』

FF4の『バトル2』は、ここで挙げた中では最も長いロングトーンの使用例で、このロングトーンは、理論でペダルノートとかペダルポイント等と呼ばれるものにあたる。鳴っている間、いくつかの異なるハーモニーを経過する。これはどちらかといえば緊張感を伴うもので、上記の緩急で言えば、鳴っている間が急、鳴り止んだところで緩とも捉えられるだろう。楽曲の構造を明確に形成していくという点では共通して、ロングトーンが機能している作例といえるだろう。

以上ロングトーンとそれにともなう緩急について見てきた。ロングトーンが、音楽において息の長い旋律であったり、あるいはペダルノートであったりするように、ロングトーンの意味するところも必ずしも緩急の尺度に限るものではないだろう。いずれにしろ戦闘シーンにおいて効果的に使われるロングトーンが、ゲーム音楽の独自な一面の一端を示しているように思われる。

戦闘シーンとロングトーン

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